透過電子顕微鏡を用いたシリコンウェーハ中の結晶欠陥の観察

LSI素子の基板として用いられるシリコンウェーハは、LSI素子製造工程中に数多くの熱処理を受けるこのとき、プロセスの熱処理条件により、シリコン(Si)中にはさまざまなタイプの結晶欠陥が発生する。これらの欠陥はLSI珪素の特性劣化を招くので、欠陥の成因を明らかにし、その発生を抑制する必要がある。

上の写真は800~1000℃程度の熱処理を行ったSiウェーハを(110)面から観察した結果を示す。大きさ約400nm(ナノメータ=100万分の1ミリ)のSiO2の析出物から、転位ループ(結晶配列の乱れた部分がループ状に連なったもの)が〔110〕方向に放出されている様子が観察される。析出物の周囲は、左側の写真に見られるように非常に複雑なコントラストを伴っているが、これは析出物の周囲に大きな歪み場が存在することを示している。

一般に、析出物や転位などの欠陥が存在すると、規則正しく並んでいた結晶格子が歪んでしまう。このため電子顕微鏡を用いて普通の明視野像によりこの歪み場を観察すると、通常数100nm程度の幅を持つコントラストが現れる。このような場合、ウィークビーム法と呼ばれる回析条件を少し変えた観察手法を用いると、歪みによるコントラストの幅を約1/5に減少させることができる。

右側の写真はウィークビーム法により観察した結果で、コントラストの幅が大きく減少している。このため欠陥の形状や方向性についてより詳細に調べることができる。たとえば、「この析出物は〈110〉方向を4辺とする正方板状で、放出された転位ループは〔110〕方向にほぼ垂直な線上であることから、画面に対して(110)面状にある」といったことがわかる。さらに、回析条件によるコントラストの変化を調べることにより、転位の周りの結晶格子の歪み方が解析でき、この転位ループは格子間型、すなわち余分な格子間Siが集合して形成されているのもであることがわかる。また格子のずれの方向はループ面に対して垂直で、その大きさは原子層の一列程度であることも明らかとなった。

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