古代鉄滓の組織と元素分布-走査電子顕微鏡による観察

古代から近代に至る各時代の鉄滓遺跡から出土する鉄滓について、それを構成する元素、化合物の種類、量、および組織の形態を知ることが重要である。その結果から、鉄滓が鉄鉱石を還元して金属鉄を作る製錬の過程で発生したものか、あるいは金属鉄を二次的に加工する際に発生した鍛冶滓であるのか、また使用された鉄鉱石の種類及び産地などを推定することが可能である。そのために、鉄滓の断面組織の光学顕微鏡による観察、化学成分の分析、あるいは粉末X線回析法による結晶成分の調査が行われ、その結果から経験的に鉄滓の構成成分を推定することが行われている。

近年になって、電子顕微鏡中で試料の断面に電子ビームを照射し、そこから放出される試料中の元素の特性X線を測定し組織中の各部の元素を分析するEDX(エネルギー分散型X線分析装置)が用いられるようになり、鉄滓中の各組織の構成成分が、さらに正確に判定できるようになった。

写真に示すのは、8世紀頃の千葉県内の製鉄遺跡から出土した、鉄滓の組織の2次電子像と特性X線像(340倍)である。ここで上段中央の写真は組織の形態を表す電子像であり、それ以外の写真は元素のX線像で、着色した明るい斑点の密度が高いほど元素の濃度が高いことを示す。

この結果から、組織は全体としてSi、Al、Ca、Oを主成分とするガラス層のマトリックスの中に、種々の析出相が分布したものであることがわかる。それらの析出相としては、Fe、Ti、Oを主成分とする多角形のウルボスピネルA、およびFe、Si、Oを主成分とする棒状のファイヤライトBが見られる。

このように組織のマトリックスがSiO2を主成分とするガラス質のものであることから、この鉄滓は鉄鉱石が木炭で還元され金属鉄が作られる際に、鉱石中の不純物が半溶融状態で還元鉄層から分離、流出して凝固した製錬滓であること、また析出相の中に多量のTiを含むウルボスピネルが見られることから、原料として使用された鉄鉱石が不純物としてTiをかなり高い濃度で含む砂鉄であることがわかる。

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