No.19「多層断面構造溶接ワイヤの特徴と今後の展開」

No.19
多層断面構造溶接ワイヤの特徴と今後の展開

純Arガスシールドアーク溶接

溶接ワイヤをCO2ガスやCO2‐Arの混合ガスでシールドして大気中の窒素や酸素の溶接金属への混入を防ぐ溶接方法は ガスシールドアーク溶接と呼ばれ、広く一般に用いられています。また、シールドガスに純Arを用いるガスシールド溶接(MIG)にすると、溶接金属中の酸素量が著しく低くなり、溶接金属の靭性を大きく向上できることが知られています。ところが、シールドガスを純ArとしてMIG溶接を行うと、ワイヤ先端から供給される溶融金属の流れが不安定となり、健全な溶接施工ができなくなってしまうという問題がありました。

多層断面構造溶接ワイヤの開発と今後の展開

この問題に対して、(独)物質・材料研究機構(NIMS)が、化学組成がワイヤの半径方向で異なる多層断面構造の溶接ワイヤを用いると、純Arシールドでもアークが安定するとの研究結果を発表し1)、純Arシールド溶接においても健全な溶接施工が行える可能性を示しました。写真12)は、従来のワイヤと多層断面ワイヤを用いて純Arシールドアーク溶接を行った時のワイヤ先端部で溶融金属が移行する状況を示しています。写真22)は、多層断面ワイヤの断面写真の例です。
  一方、同時期、Ni線と粉末を内包する多層断面溶接ワイヤの開発を行っていた日本ウエルディング・ロッド(株)はNIMSの概念に興味を持ち、NEDOの産業技術実用化開発への助成事業に応募して、多層断面溶接ワイヤの製造技術開発を開始し、これまでに多種類の多層断面溶接ワイヤの製造技術を確立してきました。当社も、この開発に加わり試作ワイヤで溶接した溶接金属の性能評価を行いました。この開発の過程で、多層断面構造ワイヤには純Arシールド溶接のアーク安定化の他にも多くの新機能があることも分かってきました。
 本ワイヤはNIMS及びNEDOの「鉄鋼材料の革新的高強度・高機能化基盤研究開発」プロジェクトにもサンプル提供され ています。さらに多層断面構造ワイヤの特長を活かして、高溶着効率のアーク溶射材料の開発等にも取り組む等、広い産業分野へ展開されています。

従来ワイヤ
(1)従来ワイヤ
多層断面ワイヤ
(2)多層断面ワイヤ
写真1 純Arシールドアーク溶接における溶融金属の移行
多層断面構造ワイヤの断面形状1 多層断面構造ワイヤの断面形状2
写真2 多層断面構造ワイヤの断面形状の例

引用文献

  • 1)中村照美、平岡和雄:溶接学会全国大会講演概要第76集、p168(2005)
  • 2)伊藤正、平岡和雄:溶接技術 第56巻、第4号、p58(2008)

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