磁場を利用した鉄鋼材料の組織制御

ゼムクリップを鎖のように永久磁石からぶら下げる実験は小学校の理化の時間に経験することです。これは、磁気誘導によってクリップの両端にN極とS極が現れたことによるものです。これと同じ現象が高温に加熱した鉄鋼材料の内部でも現れることが見い出されました。
鉄は高温では常磁性(磁石に付かない性質)ですが、温度が下がると変態して磁石に引き寄せられる強磁性に変わります。また、室温から温度を上げてゆくと、この逆の現象が起きます。日常生活に使われている鉄鋼材料では鉄に炭素が微量に入っていますが、このような鉄では、常磁性の鉄と強磁性の鉄が共存する温度域があります。その温度域で磁場(磁界ともいう)をかけると、強磁性鉄の粒子が磁場の方向に鎖のように配列することを初めて観察しました。
写真(a)は磁場をかけながら炭素鋼を25%程度まで変態させて、その後に水焼き入れした組織です。磁場と平行な試料断面の光学顕微鏡写真です。ほぼ平行な鎖が何本も見えます。写真(b)は磁場に垂直な断面ですが、網目構造となっております。このような構造の形成は、物理的には磁気双極子相互作用で説明されるものです。比較のために、磁場をかけない場合を写真(c)に示します。印加する磁場の大きさは、数テスラです。これは、病院の磁気共鳴診断装置MRIやJR総研のリニアモーターカーに使われているのと同程度の磁場です。
この研究は、ナショナルプロジェクト「スーパーメタルの技術開発」の一環として行なったものです。スーパーメタルとは、結晶粒を微細化して、強さも靭性も2倍以上になった鉄鋼材料のことです。上で述べた磁場配向組織を利用すると、小さな圧延負荷で結晶粒を容易に微細化できることが分かってきました。
磁場配向組織を持った材料では、機械的性質が方向によって異なるはずです。今後、そのような利用法も開発されることが期待されます。

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JFEテクノリサーチ株式会社 営業本部