錬鉄レール:日本最初の鉄道

写真1と2は、東京都新橋の汐留遺跡から出土した切断面が双頭型と平底型のレールで、これらのレールは新橋から横浜まで開通した(1872年)日本最初の鉄道のレールです。
双頭型のレールは営業初期に使用されていました。頭部の一方が磨り減ると上下を反転して使いました。使用できなくなったレールは、地下鉄銀座線のサードレールの送電用や駅ホーム上屋に使われて美しい姿を留めていました。現在は、交通博物館に展示されています。
鉄中の炭素が非常に少ないので、柔らかい軟鉄ですが、主に酸化物の非金属介在物を約0.5%含んでいます。分析調査の結果、イギリスから輸入された1870製「錬鉄」と推定されました。双頭レールにはDARLINGTON IRON C70 IGJRの刻印がありました。
18世紀イギリスでは、石炭の燃焼熱で銑鉄を溶解する反射炉が開発されましたが、まだ、鋳物溶解炉であり、不純物を除去する鋼の精練炉には発展していませんでした。当時、イギリスは低炭素の上質鉄材を大陸(ドイツやスウェーデン)から輸入しており、鉄材の輸入代理店主であったヘンリー・コート(英)は1783年に銑鉄を精練するパドル炉技術を開発し、特許が成立しました。石炭燃焼と溶融スラグの反応によって、不純物を除去することを可能にしたのです。半溶融の鉄浴を鉄棒で掻き混ぜ、不純物を取り除いたので、パドル法(Puddling process)と名付けました。製造された鉄を固め、続いて、ロール鍛造加工ができるプロセスで、生産性が飛躍的に向上しました。
このパドル炉精練法により製造された鉄を錬鉄(Wrought iron)と呼んでいます。このパドル精練技術の開発を契機に英国鉄鋼業は、世界の鉄鋼業をリードすることになりました。いわゆる、産業革命の一つです。その後、ベッセマー製鋼技術、酸素製鋼技術へと伝承されました。錬鉄は近代溶鋼技術誕生の鉄材と言えます。その錬鉄が日本最初の鉄道レールに使用されたのです。

1)東京都埋蔵文化財センター編:汐留遺跡出土鉄道レールおよび水道管の分析・調査、東京都埋蔵文化財センター調査報告第37集、汐留遺跡I第5分冊、p33~p67(1977.3)[岡原正明:川鉄テクノリサーチ]
2)中沢護人:鋼の時代、岩波新書No.G61(1964)、p65[岩波書店];ベック鉄の歴史,Ⅲ(2)(1978.7)、p434[たたら書房]

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