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No.12 走査型電子顕微鏡で見た金属のへき開破面と粒界破面

"KTEC News"は、旧・川鉄テクノリサーチ(株)が年4回発行していた小冊子です。バックナンバーとして掲載しておりますが、現在お取り扱いしていない製品・サービスの場合もございますので、ご了承ください。

金属構造物を極めて高温あるいは低温で使用していると、普通の使用状態では考えられないような壊れ方をするときがある。このような材料の破断面を調べてみると、それぞれに特有の破面形態が見られる。

左側の写真は炭素鋼の脆性破面を1000倍で示したもので、低温破壊の典型的なパターンであるへき開破面を示している。細い直線状の筋で区切られた滑らかな平面が見られるが、これは結晶粒子内の剥離しやすい格子面に沿って生じた破断面である。衝撃力の作用で原子間の結合力比較的に弱い格子面の間で瞬間的に剥離が起こるもので、割れ速度は数百メートル/秒にも達する。リバティー船の沈没や鉱石運搬船ぼりばあ丸の海難事故はこのような脆性破壊事例としてよく知られている。

右側の写真はステンレス鋼の600℃におけるクリープ破壊破面を150倍に拡大して示したものである。Creepとは文字どおり、はうようなゆっくりした速度で起こる現象で、一般に400℃以上の高温で長時間使用していて生じた破断面にはこのような粒界破面が見られるようになる。これは、結晶粒界でのすべりが粒内のすべりに先行して起こるために、粒界で剥離して破断する現象である。上の写真でも、結晶粒界の表面にクリープ破壊特有の細かい凸凹が見られる。ジェットエンジン、発電用タービンやボイラー、化学工業装置等の高温で運転される機器・装置の金属材料においては、クリープ破壊は大変重要な問題で、種々の調査や開発が進められている。

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