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2021年09月29日
ULV-SEMを知多地区に2021年9月より導入
JFEテクノリサーチ(株)は、試験から分析・解析までを一貫してお応えするため、知多地区に2021年9月より導入したULV-SEMについて言及いたします。
当社は、中部圏(知多地区)にある拠点に環境耐久性試験棟を新設し、技術サービスの拡充を図っています。すでに複合サイクル腐食試験(CCT:Cyclic Corrosion Test)機をはじめとした環境耐久性試験設備を拡充し、さらに同地区における受託分析・解析サービスを充実させるため、極低加速電圧走査電子顕微鏡(ULV-SEM:Ultra Low Voltage Scanning Electron Microscope)をはじめとした物理解析技術サービスを拡充してまいります。
加速する自動車のEV化、自動運転化のニーズに対応するため、試験から分析・解析までを一貫してお応えしています。さらに高度な分析技術としてULV-SEMを知多地区に2021年9月より導入します。長期間使用すると各種部品は腐食などにより劣化しますが、新設するULV-SEMをはじめとした多くの分析装置を駆使した解析により、長寿命化を図るお客様のお手伝いも加速します。センサー類をはじめ樹脂や機能性材料などに対しても、これまでの知見をもとに多角的な解析を提案し、お客様の研究開発をお手伝いします。これら耐久性試験や解析は振動、温湿度、冷熱等も可能です。
この装置を用いた材料解析の可能性をご理解いただくため、装置メーカーのカール・ツアイス社およびオックスフォード・インストゥルメンツ社と共同で、9月2日にWebセミナーを開催しましたところ、240人を超える多くのお客様にご参加いただきました。
ULV-SEMは、1kV以下程度の極低加速電圧で観察することで、従来のSEMでは分からなかった数nm厚さの極表面を観察できます。導入したULV-SEMの外観を図1に示します。図2に示す次世代のEV用固体電池用正極剤(LiCoOx)の表面に形成されたnmオーダーの極めて薄い表面改質層(LiNbOx)も、極低加速条件で初めて観察できます。この表面改質層が確かにNb系物質であることを、EDX(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy:エネルギー分散型X線分光器)分析により、事前に同定・確認しています。
導入するULV-SEMでは、形状観察主体の従来型検出器に加え、物質の化学状態や組成・結晶方位などによる像コントラスト観察用検出器を複数有することで、材料・部品の形状観察に加え、物質分布を観察することが可能です。図3に示すように、従来型の形状観察に加え、観察条件の研究・開発より得られたノウハウ(複数の検出器条件・加速電圧の適正化など)から、ネオジム磁石における6種類の物質を同定できました。この成果をAl合金に適用した結果、学会で技術賞を受賞するなど、高く評価されています。
JFEテクノリサーチは、JFEグループとして2001年に民間で最初のULV-SEMを川崎地区に導入されて以来、JFEスチール研究所が鉄鋼材料向けに開発した先進的な観察技術を移転するとともに、鉄鋼以外の材料に対して、25nmに迫るEDX分析技術を構築するなど、ULV-SEM技術を独自提案してきました。その後、福山地区にもこの技術を導入し、表面処理鋼板など鉄鋼材料への寄与を主体としつつ、西日本のお客様向けに技術提案をしています。この結果、3拠点でULV-SEM観察が可能となりました。
この間、ULV-SEMも、検出感度の進歩から従来以上に微細な表面構造も観察可能、さらに微細な部分の分析のための極低加速条件の観察と同条件でのEDX分析など、大きな進歩を遂げています。材料物性の各種試験から、その物性が出現する微細構造までを総合的に解析できる第3の拠点として、中京地区の知多に、この新型ULV-SEMを導入し、従来の材料解析技術に加え、電池、磁石などの材料、カーエレクロニクス・5G向けの電子部品、マルチマテリアル材料の接合・接着などで必要になる材料界面・表面の解析技術を提案し、お客様のモノ作りの問題解決にお役に立ちたいと考えています。その結果、当該技術により、JFEグループ以外の外販として、前年度に対し、30%増の売り上げを狙っていきます。
図1 知多地区に2021年9月に導入したULV-SEM(極低加速電圧SEM)の外観写真
図2 ULV-SEM(極低加速電圧SEM)による、極薄表面改質層の観察
材料: LiNbOx系表面改質が施された、全固体電池用LiCoOx系正極剤。
(a)表面敏感条件および通常条件で観察した二次電子像。(b)像コントラストの由来物質確認のためのEDXマッピング。
図3 ULV-SEMの結像用検出器の組み合わせによる物質相を見分けた観察
(a)ネオジム磁石における母相中の5種の析出相の観察、(b)Al合金中の金属間化合物析出相の観察。
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