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No.03「光で量る(2)」
JFE-TEC News No.03号 高松塚古墳壁画が語る歴史のロマン 他 記事一覧
No.03 高松塚古墳壁画が語る歴史のロマン 他
光で量る(2)~X線分析技術 その1~
1~数10nmと波長が短い光であるX線や電子を物質に当てると特性X線や電子などが放出されます。放出されたX線や電子の強度は物質の組成に比例し、そのエネルギーは元素に固有のものです。このため、放出される電子やX線を計測したチャート(スペクトル)上の縦軸が物質の組成に、横軸が物質の種類に対応します。すなわち、X線分析は材料・プロセスの問題解決のために必要な構成元素やその化学形態を、さらにその元素の含有量や存在する場所を決定することができます。含有量測定や存在場所決定では、得られたチャートの縦軸を“見る”ことが“X線で量る”ことであり、構成元素の確認やその化学形態測定では、横軸を“見る“ことが、“X線で観る”ことになります。実際、放射されるX線を使って”量る”方法に、蛍光X線分光分析法(XRF)、電子線マイクロアナリシス(EPMA)やエネルギー分散型X線分光法(EDX)などがあり、X線を当てて“観る”方法にX線光電子分光法(XPS)があります。
今回は、縦軸を“見る”定量分析と分布分析について述べます。
XRF法は試料にRhなどの管球から発生するX線を照射すると構成元素の内部電子が飛び出し、その結果空孔部への電子遷移が起こります。同時にこのときのエネルギー差に相当する蛍光X線が放射されます。このX線の波長(エネルギー)および強度を測定することで定量分析ができます。蛍光X線分析の特徴は非破壊で、迅速、再現性の良い分析が期待できることです。鉄鋼製造をはじめ多くの分野で利用されています。
最近、このX線分析計を小型化し、これが環境分析に応用されています。例えば土壌中の重金属類やEU規制物質である鉛、水銀、カドミウム、砒素、PBB等の測定に利用されています。当社でも小型X線分析装置を利用した土壌のオンサイトモニタリングなどの業務を受託しています。装置を土壌浄化現場に持ち込みその場分析へ適用しています。さらに蛍光X線分析用土壌管理試料も開発し多くのユーザーの方に利用していただいています。写真に装置および管理試料を示しました。
一方、EPMAでは、試料に電子を照射するとXRFと同様な電子遷移により、特性X線が放射されます。特に、ビーム径の小さい電子を走査しながら発生したX線強度の分布を“量る”と、分析したい元素が、ミクロン程度の微小領域で、どの程度存在しているのかが分かります。例えば、低合金鋼の腐食生成物中のCr分布(図)から、鋼板上に生成した腐食生成物中に層状にCrが濃化していることが分かりました。
写真 小型蛍光X線分析装置および土壌分析用管理試料
図 EPMAを用いて測定した低合金鋼の腐食生成物中のCr分布とSEM像
(SEM像に見られる腐食生成物中の点線で示した部分にCrが濃化している)
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