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No.04「光で量る(3)」
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No.04 顔のシンメトリ 他
光で量る(3)~X線分析技術 その2~
X線で量ると!
前回、X線で量ることにより、元素の組成や分布を調べることができることを示しました。さらに、材料・プロセスの問題解決のためには、構成元素の化合物種を調べ(状態分析)、そのプロセスにおける化学反応を知ることも重要です。このようなX線で量る状態分析法に、X線光電子分光法(XPS)やX線回折法(XRD)などがあります。
試料極表面の化学状態を、X線で量る
XPSを用いると、試料の極表面数nm程度に存在する元素の化学結合状態を推定できます。すなわち、X線を照射することにより放出される光電子のエネルギーは、元素の化学結合状態を反映しているからです。
図1の例では、青で示したスペクトルに見られるピークは一つであり、酸化物によるものです。赤で示したスペクトルには、このピーク以外に金属Feに起因する小さなピークが見られます。実は、青で示したスペクトルは斜め方向(35°)から測定したもので、表面に近い情報を持っています。赤で示したスペクトルは垂直方向で測定し、内層の情報を持っています。
化学状態の情報と、深さの情報すなわち、平均自由行程(光電子がエネルギーを失わないで移動できる距離)とを組み合わせて考察すると、このステンレス鋼の表面酸化膜の厚さは3nm程度であるものと考えられます。
図1 ステンレス鋼(SUS304)表面に存在するFeのXPSスペクトル
結晶構造を、X線で量る
X線を試料に照射すると、その原子配列すなわち結晶構造に特有な方向(回折角)のX線強度が強くなる回折現象が生じます。XRDでは、回折角に対してX線の強度を測定したX線回折図形と標準物質のパターンと照合することで、物質の化合物種を決定できます。図2に示した例では、M2C, M3CおよびM23C6の異なる3タイプの炭化物が、鋼中に析出していることがわかりました。
図2 鋼中析出物から得られたX線回折図形と標準X線回折図形
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