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No.05「最近の係争事例から(4)」
JFE-TEC News No.05号 レーザICP質量分析法(LA-ICP-MS)による局所・表面分析 他 記事一覧
No.05 レーザICP質量分析法(LA-ICP-MS)による局所・表面分析 他
最近の係争事例から(4)~退職者の発明~
今回は退職後に出願した特許に関する事例を紹介します。
退職者が元の勤務会社を訴えた
A社を退職した元従業員(退職者)が、発明を出願して特許権を取得し、A社を特許侵害で訴えました。これに対してA社は、本件発明は退職者が在職中に職務として行った発明であり、従って、A社は職務発明に基づく通常実施権を有しているから、特許侵害には当たらないなどと主張しました。
発明はいつ完成したか
裁判では、①本件発明はA社の業務範囲に属するかどうか、②本件発明は退職者の職務に関するかどうか、③本件発明は退職後に完成したのかどうか、が争点となりましたが、結局、本件発明は、A社の業務範囲および退職者の職務範囲に属しており、また、在職中に完成させた発明であると認定して、退職者の主張を退けています。 特に、退職者は退職後1ヶ月以内に出願していること、および、この間発明を完成させるための研究開発を行ったとは認められないことから、本件発明は在職中に完成していたものと推認しました。
発明完成時期の影響
A社を退職した従業員がB社に再就職した場合はどうでしょうか。A社在職中に発明を完成させた場合は、A社は通常実施権を有しますが、発明未完成のままA社を退職し、B社で発明を完成させた場合は、B社に通常実施権があり、A社に無いことになります。そこで、A社としては、秘密管理規程類を整備して従業員に守秘義務を課すのは勿論ですが、従業員の研究開発状況をきちんと把握し、発明が完成すれば直ちに発明を譲り受け、また発明完成時期を証明できるようにしておくことが大切です。さらに、退職時に守秘契約を締結することも有効です。
一方、B社としては、A社での発明の有無、守秘義務の有無等を確認し、無用のトラブルを発生させないような手立てを講じておく必要があるでしょう。
参考文献 松本 司:知財管理 判例と実務シリーズ No.207
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