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No.07「イオンで量る(2)」
JFE-TEC News No.07号 光ファイバー温度計による溶接部温度測定の高精度化 他 記事一覧
No.07 光ファイバー温度計による溶接部温度測定の高精度化 他
イオンで量る(2)~有機化合物の構造解析~
全ての原子や分子には固有の重さがあり、この重さを精密に測定することで物質の種類を推定することができます。この重さを量る手法の一つに、原子や分子をイオンとし、電磁気的に質量(m)/電荷(z)の順に分離測定する質量分析法(Mass Spectrometry, MS)があり、有機化合物の構造解析やGC(Gas Chromatography)・LC(Liquid Chromatography)と組み合わせた極微量分析のための検出法として広く利用されています。
化合物の分子量及びその分布測定
有機化合物は、真空中で気化し高いエネルギーをあてると電子1個がたたきだされ、カチオンラジカル(分子イオン)を生成します。エネルギー源としては、電子流(電子イオン化(EI))が最も良く用いられていますが、測定の目的や対象物質に応じて、様々なイオン化法を利用することができます。図1は、FD(Field Desorption)法と呼ばれる分子イオンを生成し易いイオン化法を用いて、オイルを測定した例です。質量数(m/z)14ピッチでイオンが検出され、-CH2-基(質量数14)構造を持つパラフィン系炭化水素が主成分であることがわかります。また、イオンの強度分布より、分子量352をピークに200~450の分布を持つオイルであることが分かります。
図1 FD法で得られたオイルの分子量分
化合物の構造解析
また、生成したカチオンラジカル(分子イオン)は開裂を起しフラグメントと呼ばれるいくつかのイオンを生成します。このフラグメントイオンのできかた(開裂パターン)を測定することで、化合物の構造に関する重要な情報を得ることができます。図2は使用が禁止されている殺菌剤(農薬)を、EI法でイオン化し得られた開裂パターンです。大きなピークから-35(35Clに対応)ピッチで7種のピーク群が検出されていること、更には、質量数282近傍の強度パターンが塩素6個の場合に特有のパターンであること等から、ヘキサクロロベンゼンであることがわかります。このように、有機化合物の構造決定にはそのイオンを利用した質量分析法が重要な技術となっています。
図2 EI法で得られた殺菌剤(農薬)の開裂パターン
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