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No.08「接合技術の最近のトピックス(3)」
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接合技術の最近のトピックス(3)
No.08 土壌オンサイト分析 他
接合技術の最近のトピックス(3)~日本発のオリジナル技術 その2~
今回は、日本発のブレークスルー技術として、昨年独立行政法人物質・材料研究機構(NIMS)がアイディアを提供した純Arシールドガスでのアーク溶接(MIG溶接)技術について紹介します。
従来のMIG溶接
従来のMIG溶接では、アークを安定化するためにArに微量のO2を加えたシールドガスがよく使われています。これは「純ArによるMIG溶接ではアークが不安定で健全な溶接ができない」とされているからです。NIMSのアイディアは、2種類の金属を組み合わせた同軸多層(ハイブリッド)ソリッドワイヤを用いれば純ArのMIG溶接でもアークを安定化することができるというものです。
MAG溶接
通常のガスシールドアーク溶接(MAG溶接)では、シールドガスにArと10~20%CO2の混合ガスを用います。この方法では溶接ワイヤと溶接される鋼板との間に安定したアークが発生して健全な溶接ができます。
ところが、ステンレス鋼にMAG溶接を適用すると、溶接金属中に数100ppmの酸素が混入して酸化物が形成されます。ステンレス鋼の場合には、溶接金属中の酸化物は靭性に悪影響を及ぼすので、溶接金属の靭性向上には酸素量をなるべく低くする必要があります。それにはMAG溶接ではなく、純ArシールドのMIG溶接が最適です。しかし、純ArシールドのMIG溶接には「アークが安定しない」という問題があって、ステンレス系溶接金属を極低酸素にして優れた靭性を得ることは困難でした。
ハイブリッドソリッドワイヤによるMIG溶接
NIMSのアイディアは図1のような、周辺部材(フープ)とその融点より低い融点の中心部材(芯ワイヤ)を組み合わせたハイブリッドソリッドワイヤを用いて所定成分の溶接金属を得るというものです。写真1と2は、通常ワイヤとハイブリッドソリッドワイヤを用いて純ArのMIG溶接を行ったときのアークの様子を比較したもので、ハイブリッドソリッドワイヤにおいては安定したアークが形成されています。
この技術は従来の常識を打破した画期的なもので、近い将来「日本発の独創技術」として広い分野で使われるようになることが期待されています。
図1 ハイブリッドソリッドワイヤの構造
写真1 通常ソリッドワイヤによる純アルゴンMIG溶接における溶滴移行状況
写真2 ハイブリッドソリッドワイヤによる純アルゴンMIG溶接における溶滴移行状況
(写真は、平岡:ハイブリッドソリッドワイヤの提案、溶接技術Vol.54 (2006)、p64-69、産報出版株式会社、より引用)
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