素材、IT関連、バイオなど広範な産業で、ナノテクノロジーが活用されるのにともない、これら材料・製品の研究・開発および品質管理でも、ナノレベルの分析・解析技術が要求されるようになっています。
従来から、走査電子顕微鏡(SEM: Scanning Electron Microscope)は、材料の表面観察および元素分析するための分析技術として広く用いられています。
当社が国内に先駆けて導入した最新の極低加速電圧SEM(100Vまで加速電圧を低くできる。通常は5kV~20kVで使用される。)は、電子線を細く絞ったまま、電子の侵入深さを小さくできるため、ナノレベルの材料表面の観察に適しています。また、極低加速電圧SEMと組み合わせることで、EDX分析(エネルギー分散型X線分光法:Energy Dispersive X-ray Spectrometry)の空間分解能が向上することも明らかになってきました。
図1に、EDXを用いたGaAs/AlAs超格子薄膜断面のGaおよびAlの濃度マッピングを示します。分析した試料は、図2の模式図のように、GaAs基板上にGaAs層とAlAs層が交互に2層ずつ積層したものです。入射電子の加速電圧を低くしX線発生領域を小さくできたこと、また低加速電圧でもビーム径が充分小さいことにより、従来のSEMEDX分析の常識であった1μm程度の空間分解能を遥かに越えて、約25nmのGaAs層およびAlAs層をそれぞれ分離できることを初めて示しました。
このように、極低加速電圧SEM-EDXを用いることにより、これまで分析が困難であったナノレベルの構造解析のニーズにもお応えできます。