JFE-TEC News
No.12「電子で量る(3)」
JFE-TEC News No.12号 ダイオキシン類の迅速分析法 他 記事一覧
No.12 ダイオキシン類の迅速分析法 他
電子で量る(3)~EPMAを用いたミクロな定量分析~
電子で量るシリーズの3回目として、電子線マイクロアナライザ(Electron Probe Micro Analyzer: EPMA)による定量分析法を紹介します。
EPMAとは
加速した電子を試料に照射すると、試料からX線が発生します。このX線は原子の種類によって波長(エネルギー)が決まっているので、特性X線と呼ばれています。EPMAとは、電子が照射されている微小領域(約1μmφ)の特性X線のスペクトルを結晶で分光測定することにより、構成元素と濃度を分析する装置です。ビーム走査または試料ステージ駆動と組み合わせると、元素分布が測定でき、コンピュータによるデータ処理を駆使したカラーマッピング出力も広く行われています。
EPMAの定量分析
EPMAによる定量分析には、標準試料と未知試料との相対強度を求め、Z:原子番号補正、A:吸収補正、F:蛍光励起補正を施すZAF法と、濃度既知の同一系の標準試料を数点準備して検量線を作成し、この曲線からその濃度を推定する検量線法があります。前者は%オーダー濃度、後者は%以下の微量濃度の定量に適した方法です。
微小領域における鋼中炭素(C)定量分析
鋼材中のCを精度良く分析するには、標準物質の選択、検量線の管理、試料調整がきわめて重要です。図1にCの検量線を示します。分析精度はσ=±0.03%が得られています。この検量線を用いた炭素鋼(C量0.353mass%)の分析結果を図2に示します。C量は、表面付近に最大0.59mass%で濃化し、表面から0.5mm付近まで徐々に減少し、その後ほぼ一定になっています。母材の平均C量は0.36mass%で、化学分析値ともほぼ一致しています。鋼中のC量と相関があるとされているビッカース硬度分布と同様な傾向が得られています。微小領域におけるC量が定量的に把握できるので、金属組織との対応をとりながら、熱処理の良否の判定や浸炭・脱炭の確認にきわめて有効です。
図1 C検量線
(Fe-C合金0.10~0.66 mass%)
図2 炭素鋼(C濃度0.353mass%)の深さ方向分析結果
(C濃度の大小は、ミクロな組成の違いを反映している。)
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