No.18「微細構造を明らかにする物理解析(1)」

No.18
微細構造を明らかにする物理解析(1)~ナノ構造にせまるTEM観察技術-1 TEM像、電子回折~

透過電子顕微鏡の原理

物質内部の微細構造を原子レベルで評価できる最も有力な手法として透過電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)が広く利用されています。高加速電子(例えば200kV)を、100nm程度以下に薄く加工した試料に照射して、透過した電子を拡大し結像することで、その微細構造を観察することができます。
 TEM像というと、一般的に明視野像を思い浮かべます。そのコントラストは、結晶による電子のブラッグ回折、原子番号、試料の厚みなどに起因しています。結晶粒や合金相、析出物、薄膜積層などの観察ができるほか、転位や積層欠陥なども観察できます。また、回折波だけを使って結像する暗視野像では、特定の結晶だけを像にすることができ、析出物や結晶粒径の確認に役立ちます。更に、透過波と回折波の干渉を利用すると格子像の観察も可能です。
 また、電子回折図形から、非晶質・単結晶・多結晶等の結晶状態把握や、結晶構造の決定ができます。

TEMによる観察例

写真1に、リチウムイオン二次電池負極材カーボンの粒子を数十nm厚に薄く輪切りにした断面TEM像(試料調製:FIB法による)を示します。電池性能劣化や安全性確保のため、近年TEMによる調査が盛んに行われています。細長い層状の暗いコントラストがグラファイト部で、層間の白い部分が電解質サイトを含む領域を示しています。天然黒鉛の特徴であるわずかな配向が確認できます。こうした配向は性能に寄与するとされています。電子ビーム照射径10nmφ領域から得られた電子回折図形を写真2に示します。写真中央の点(0000)から周囲の斑点までの距離が、原子の面間隔に相当します。この斑点間の距離を実測し、TEM固有の係数から計算することでグラファイトであることを確認できます。
 TEMに、EDXやEELS等の分析装置を付帯することより、更にナノの世界が明らかにできます。これら分析については次回に述べます。

(左)図 負極部の模式図 (右)写真1 リチウムイオン二次電池 (試料調製:FIB法)
図 負極部の模式図(左) 写真1 リチウムイオン二次電池(試料調製:FIB法)(右)
写真2 Point1の電子回折図形極微小領域の電子回折図形により、Point1の部分がグラファイトであることを同定できた。
写真2 Point1の電子回折図形極微小領域の電子回折図形により、
Point1の部分がグラファイトであることを同定できた。

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