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No.19「微細構造を明らかにする物理解析(2)」
JFE-TEC News No.19号 多層断面構造溶接ワイヤの特徴と今後の展開 他 記事一覧
微細構造を明らかにする物理解析(2)
No.19 多層断面構造溶接ワイヤの特徴と今後の展開 他
微細構造を明らかにする物理解析(2)~ナノ構造にせまるTEM観察技術-2 TEM-EELS分析~
TEM-EELS法の特徴
前号で、透過電子顕微鏡(TEM: Transmission Electron Microscopy)についての説明をしました。本号では、分析機能について特徴的な電子エネルギー損失分光法(EELS: Electron Energy Loss Spectroscopy)機能の説明をします。
薄膜試料に入射した電子は、内殻励起やプラズモン励起などの素励起を引き起こし、エネルギーを失います(非弾性散乱)。この損失エネルギーは元素に固有なもので、エネルギーに対する強度を測定するEELS法により元素の分析が可能になります。EELSの特徴は、(1)入射電子により励起された特性X線を測定するEDX分析同様、FE(Field Emission)型TEMに組み合わせるとnmオーダの局所分析が可能、(2)Liを含み軽元素側の感度が良い、(3)元素情
報だけでなく化学結合状態の解析が可能、という利点があります。
EELSの測定例
図に、DLC(ダイヤモンド・ライク・カーボン)皮膜のカーボンのEELSスペクトルを示します。ピーク立ち上がりの部分から50eV程度の構造はELNES(Energy Loss Near Edge Structure)とも呼ばれ、C原子の化学状態を反映しています。295eV付近のブロードなピークは、ダイヤモンド的であることを示しています。約285eVの鋭いピークはグラファイト的な成分特徴です。従って、このDLCはグラファイト成分をわずかに含むダイヤモンド的な皮膜であることが分かります。このように、EELSスペクトルの形状を細かく解析すると、DLC皮膜の化学状態を簡便に評価することが可能です。なお、ELNESより高いエネルギー領域の構造を用いると、特
定の原子の配位構造を調べることも可能です。
以上のように、TEM-EELSを用いると、DLCのような炭素材料だけでなく、金属中の非金属析出物、電子材料に用いられる各種化合物薄膜など、ナノレベルでの構造を制御している各種材料へ応用が可能です。
図 DLC皮膜のTEM-EELS測定例
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