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No.23「高精度赤外線カメラの応用(3)」

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No.23(2010年04月)
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No.23 膜厚の面分布を高解像度で迅速に測定できる『FiDiCa』 他

高精度赤外線カメラの応用(3)~疲労限度の迅速推定~

高精度赤外線カメラの応用のひとつに疲労限度(それ以下では疲労破壊が起こらない最大の応力範囲)の迅速推定があります。ここでは、アルミニウム合金のMIG溶接継手の疲労限度を推定した例を紹介します。

微小温度変化によるひずみ蓄積の測定

溶接部を含む試験片を疲労試験機に取り付け繰返し応力を加え、赤外線カメラで数十秒間撮影して、ひずみ蓄積による温度変化を測定します。加える応力範囲を段階的に上げていき、ひずみ蓄積による温度変化の測定を繰返し実施します。この温度変化ΔTは応力範囲Δσが大きくなるに従って増大し、ΔTとΔσの関係は図のようになります。Δσが小さいところではΔTとΔσの間に直線関係が成り立ちますが、Δσがある値以上になるとΔTは急激に増加します。写真は、応力範囲が高い条件で行ったひずみ蓄積による温度変化測定の画像です。溶接金属や熱影響部よりも母材部でΔTが高くなっています。

疲労限度の推定方法

この測定結果から、この合金のMIG溶接継手の疲労限度は、ΔTが急激に増加し始めるΔσ、すなわち118MPaと推定されます。また、疲労破壊の場所は母材部になると予測できます。このようにして求めた疲労限度は、測定に用いたアルミニウム合金の文献データとよく一致しています。ΔTが急激に増大する応力範囲では、材料の内部でミクロ的なひずみの蓄積が起こり、疲労き裂の前駆的な欠陥が生じていると考えられます。何本もの試験片で疲労試験を行って疲労限度を求めるには通常10日間ほどかかりますが、この方法を用いれば、半日程度の測定で疲労限度を求めることが可能です。
高精度赤外線カメラは、疲労限度測定に限らず、多くのさまざまな分野に応用できます。当社では、この技術の利用範囲を広めるような試みにつぎつぎと取り組んでいます。

図 ひずみ蓄積による温度変化と応力範囲の関係
図 ひずみ蓄積による温度変化と応力範囲の関係
写真 アルミニウム合金MIG溶接継手疲労試験片のひずみ蓄積による温度変化画像
写真 アルミニウム合金MIG溶接継手疲労試験片の
ひずみ蓄積による温度変化画像

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