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No.28「極微量分析技術(1)」
JFE-TEC News No.28号 電池LAB(3) 他 記事一覧
極微量分析技術(1)
No.28 電池LAB(3) 他
極微量分析技術(1)~高質量分解能型誘導結合プラズマ質量分析~
はじめに
誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS:Inductively Coupled Plasma Mass Spectrometry)法は、アルゴンのプラズマをイオン化源とした質量分析法です。その特長は、検出下限がpptレベルの高感度で、60元素程度の迅速同時定量が可能ということにあり、半導体や電機、鉄鋼・非鉄、化学、食品、環境など幅広い分野で極微量分析に利用されています。
高質量分解能型誘導結合プラズマ質量分析 HR(High Resolution)-ICP-MS
一般的なICP-MS装置は四重極型質量分析計を用いた装置(ICP-QMS)で、この装置を用いることにより60元素程度を数分で同時分析することができます。しかし、プラズマ内で生成した分子イオン;14N16O1Hや15N16O, 38Ar1H,40Ar16Oなどが、それぞれ31P, 39K, 56Feなどの質量スペクトルに重なり、これら成分の高感度・高精度な定量を困難にしています。当社ではこの問題を解決したHR-ICP-MSを導入し、極微量分析の適用範囲拡大を図っています。
当社で導入したHR-ICP-MSは(写真1)、磁場と電場を組み合わせた二重収束型質量分析計を備えたもので、質量分解能が高く、定量イオンと分子イオンとの質量分離が可能です。図1に、リン(31P, M=30.9737)の定量に影響を与える分子イオンの質量分離状況を示しました。図の横軸は質量数を、縦軸はイオン強度を示しています。質量分解能を4,000程度まで高めることにより、15N16O(M=30.9950)などの分子イオンの影響を排除することができ、0.1ppb程度のPの定量が可能になります。
おわりに
当社では、ICP-QMSおよびHR-ICPMSを保有し、様々な応用技術を確立してきました。超純水や薬液中の不純物定量、食品中に微量存在する機能性成分の定量、試料溶液化のノウハウを活用した各種金属の不純物分析や純度評価、レーザー照射技術を利用した固体表面の迅速分析などです。“極微量分析技術“シリーズでは、その一端を紹介していきます。
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