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No.28「微細構造を明らかにする物理解析(11)」
JFE-TEC News No.28号 電池LAB(3) 他 記事一覧
微細構造を明らかにする物理解析(11)
No.28 電池LAB(3) 他
微細構造を明らかにする物理解析(11)~収差補正型透過電子顕微鏡による原子スケールの観察~
収差補正型TEMの利点
電子材料、電池材料、金属材料などの高性能化・高機能化を図るために、ナノスケールの構造制御が行われています。従来、微細な構成物質の観察には、透過電子顕微鏡(TEM: Transmission Electron Microscope)が用いられています。しかし、カメラなどの光学機器と異なり、電子顕微鏡ではレンズの収差を取り除くことができず、nm以下の微細構造を観察することが困難でした。近年、収差補正の技術が格段に進歩し、ビーム径を0.07nmまで絞ることが可能になりました。これにより、サブnmサイズの物質を観察できる収差補正型TEMが開発されました。
この電子顕微鏡を用いてHAADF像(High Angle Annular Dark Field image:高角度散乱暗視野像)を観察すると、電子の散乱能の違いから原子1個1個の状態の違いを見分けることが可能になります。
収差補正型TEMによる原子の観察例
図1に、GaAs基板上のGaAs/GaAlAs超格子薄膜についての収差補正型TEMによる観察例を示します。GaAsとGaAlAsとの原子配列は同一であるため、従来のTEM像ではGaAs層とGaAlAs層との違いが認められなかったのに対し、HAADF像では、GaAs層とGaAlAs層とをコントラストの違いで見分けられるだけでなく、Ga-AsとAl-Asとの最近接原子の違いも明瞭に区別することができます。すなわち、電子散乱能の小さいAlが暗く、Gaが明るく観察されています。
当社では、原子レベルの観察が可能な収差補正型TEMを用いた受託分析を2010年に開始しました。数nmの多層膜構造、異種材料の界面生成物相、結晶粒界偏析など、ナノスケールで制御する様々な材料の開発に、大きな威力を発揮しています。このような新しい材料解析技術をタイムリーにご提供することで、お客様の研究開発のお手伝いをさせて頂きます。
図1 収差補正型TEMで撮影したGaAs/AlGaAs 超格子薄膜断面観察
(a) GaAs/AlGaAs の原子配列, (b)低倍のHAADF 像,
(c)収差補正型TEMで撮影したHAADF 像, (d)従来TEM像
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