JFE-TEC News
No.76「X線回折ラインプロファイル解析による転位状態評価」
JFE-TEC News No.76号 物理解析の最前線特集号 記事一覧
X線回折ラインプロファイル解析による転位状態評価
No.76 物理解析の最前線特集号
X線回折ラインプロファイル解析による転位状態評価〜材料の機械特性と相関する材料内部欠陥の定量的評価〜
Quantitative Evaluation of Material Internal Defects Correlating with Material Mechanical Properties
なぜいまこれが?
金属材料中の構造欠陥の一つである転位の状態は、材料の機械特性や水素脆化などのメカニズムに大きく影響します。転位は、材料の加工方法や熱処理方法によって、その形態や密度が大きく変化するため、転位の状態を詳細に把握し、材料やプロセスの設計にフィードバックすることが求められています。これまでは、一般的に、透過電子顕微鏡等によるμmオーダーの局所的組織観察にて転位の状態を評価することや、X線回折による回折ピークの半価幅より転位密度を簡易に評価していました。
これがポイント!
当社では、X線回折法によって得られたX線回折パターンを精密にラインプロファイル解析することで、転位の状態を高精度に評価することが可能です。解析方法には、modified Williamson-Hall/Warren-Averbach法もしくはConvolutional Multiple Whole Profile fitting法を適用し、転位密度に加え、転位配列(転位下部組織の発達度)や転位構造(らせん/刃状成分割合)および結晶子サイズを定量的に評価可能です。図1に、フェライト系ステンレス鋼に対して、10~50%の圧下率で冷間圧延を施した試料の解析結果を示します。圧下率が増すにつれて転位密度が増加し、いずれの試料も転位配列パラメータM値が1.0以下の値であることから、転位下部組織の発達(転位のセル構造の発達など)が予測できます。本結果は、図2に示す走査透過電子顕微鏡による転位組織の観察とも整合します。X線回折で得られるこれらの情報は、電子顕微鏡で取得できるものよりも圧倒的に材料の平均情報を反映するため、加工硬化や水素脆化など材料のマクロな特性に直結する現象の理解へ寄与することが期待されます。お気軽にご相談下さい。
(試料提供:JFEスチール(株))
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