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No.24 ジュラルミンの組織と元素分布の観察-EPMAで見たその素顔
“KTEC News”は、旧・川鉄テクノリサーチ(株)が年4回発行していた小冊子です。バックナンバーとして掲載しておりますが、現在お取り扱いしていない製品・サービスの場合もございますので、ご了承ください。
アルミニウム合金の中でジュラルミンと呼ばれているAl-Cu-Mg系の合金は、比重が小さくしかも強度は鋼に匹敵するものであることから、航空機の機体をはじめ各種の機械部品の素材として多くの分野で使用されている。
ジュラルミンは添加元素としてCu、Mgを、また不純物元素であるSiを含んでいる。これらの元素は高温状態ではAl組織中に固溶している。
この組織を急冷して各元素を固溶したままの焼き入れ組織としたのち常温で放置すると、これらの元素がCuAl2、Al5Cu2Mg2、あるいはMg2Siとして析出しようとして原子の移動が起こり、固溶体内の原子配列が変化し、それによって起こる時効硬化で高い強度が得られる。
写真左に示すのは光学顕微鏡によるジュラルミンの金属組織であり、右側の4枚の写真はEPMAによる同じ組織中の各元素のX線像である。X線像は明るい斑点が多いほど元素の濃度が高いことを示している。
これらの写真を見ると、この組織の生地はCu、Mg、およびSiを固溶したAl相であり、その中に各種の析出相が分散していることがわかる。これらの析出相の中で、光学顕微鏡による写真で黒褐色の斑点の集まり(a)として見られるのがCuAl2、Al5Cu2Mg2、Mg2Siなどの金属間化合物である。また、他の粒子の間を埋めるように点在している緑色の組織(b)がFeとSiを含む析出相である。
光学顕微鏡によって観測される金属組織の各相は、研磨された金属試料の表面が化学薬品によってエッチングされる際に、各相の表面が化学薬品との反応性の違いによって、異なった色調を示すことを利用したもので、その判定の基準はかなり経験的なものである。
これに対して、金属組織の光学顕微鏡写真とEPMAによるX線像を対応させて観測することにより、組織を構成する生地と析出相が、それぞれどのような元素で構成されているかを直接的に明確にすることができる。
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