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No.30 200kV電子顕微鏡による磁区細分化珪素鋼板の観察

"KTEC News"は、旧・川鉄テクノリサーチ(株)が年4回発行していた小冊子です。バックナンバーとして掲載しておりますが、現在お取り扱いしていない製品・サービスの場合もございますので、ご了承ください。

珪素鋼板のような強磁性体が磁区(magnetic domain)と呼ばれる一種の磁石の集まりであることは本誌No.16で紹介した。走査電子顕微鏡を用いて、加速電圧200kVの高速電子を試料表面に導入し反射電子を捕らえることで表面下ミクロン程度の深さの磁区像が複雑な前処理なしに観察可能で、絶縁被膜のある珪素鋼板等に広く適用されている。

変圧器等の鉄芯に使用される一方向性珪素鋼板は、製品の二次再結晶粒を(110)面、〔001〕方位(Goss方位)に高度に集積させたもので、高磁束密度および低鉄損の磁気特性が要求される.最近この鋼板について表面の研磨加工とセラミック・コーティングを組み合わせて鉄損を顕著に低減できることが発見された。

上の写真は、最近日本金属学会誌※に発表されたTiNの被覆による磁区細分化の例である。1個の大きなGoss方位二次再結晶粒の中にTiN被覆と研磨のままの領域をつくり、磁区構造を観察した。左側の研磨領域は、白と黒の交互に圧延方向に長く延びた大きな180磁壁間隔が極端に細分化している。とくに、左右の境界では1本の主磁区が急激に6本の磁区に細分化しているのが注目される。

また、TiNの被覆領域の始まる位置では細分化した6本の磁区は先端が細くレンズ状の構造を示している。さらに、境界の研磨側では縦縞状の還流磁区が圧延方向±45°の領域内に形成された磁区構造で、これは両領域の磁化の不整合および境界領域に生じた局部歪みによると考えられる。
このTiN被覆一方向性珪素鋼板の超低鉄損化は、鋼板表面近傍の強力な張力付与によって磁区細分化が達成されたことによると考えられる。

※井口征夫(川崎製鉄株式会社技術研究所主席研究員): 日本金属学会誌、59(1995), No.3, P.347

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