ティンフリー鋼板表面のAFM(原子間力顕微鏡)観察

ティンフリー鋼板※は18リットル缶、ペール缶と呼ばれる塗料や化学薬品の容器の胴体として用いられる、低炭素鋼を冷間圧延した原板に電解クロム酸処理を施した厚さ0.14~0.6mmの鋼板である。金属Crが片面最少平均値で30㎎/m2付着しており、さらに最表面層として5㎎/m2のクロム水和酸化物が存在している。
食缶などの用途にはさらに樹脂コーティングが施されるが、クロム水和酸化物は耐食性の向上とコーティング層のなじみを良くするために必要である。

この鋼板を缶として用いるには溶接工程を経なければならないが、ティンフリー鋼板は、ぶりき(すずめっき鋼板)に較べ塗膜密着性に優れ経済的にも有利であるが、水和酸化物層は電気抵抗が大きいために溶接が難しく、前処理として溶接部のめっき層を研削除去していた。この工程は余分であるとともにそれにともなう欠陥も生じる。研削なしに安定した溶接が可能なティンフリー鋼板が望まれていた。

川崎製鉄では金属Crを部分的に隆起状にめっきすることにより、この問題を解決した溶接缶用ティンフリー鋼板を開発した。写真はその最表面のAFM(原子間力顕微鏡)像である。

近接する2つの物体間には力が作用する。探針を試料に近づけると針にはまず引力が働き、さらに近づけると斥力が作用する。針を板バネに取り付ければ、針に動く力が計測できる。また、働く力が一定になるように針の高さ位置を制御しながら試料表面上を走査すれば、表面の凸凹がわかる。これがAFMの原理である。
その分解能は0.01~0.02nmにも達し、表面原子構造まで観察可能である。また、高精度の表面の粗さ計としても利用されている。

この写真では、部分的に100nm程度の高さで隆起が存在していることが示されている。金属Crが隆起しているため、溶接時の加圧力でその上にめっきされている水和酸化物層が機械的に破壊され、金属Cr同士の接触が起こり、電気回路が形成されて電極直下の圧接部の接触抵抗が少なくなり、溶接性が改善されると考えられる。

※すず(ティン)を使わないクロムめっき鋼板

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