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2022年07月14日
ULV-SEMを千葉地区に2022年5月より導入
JFEテクノリサーチ(株)は、試験から分析・解析までを一貫してお応えするため、2022年5月に千葉地区に、極低加速電圧走査電子顕微鏡(ULV-SEM:ULV-SEM:Ultra Low Voltage Scanning Electron Microscope)を導入いたしました。
当社は、JFEグループとして2001年に民間初のULV-SEMを川崎地区に導入して以来、JFEスチール(株)が鉄鋼材料向けに開発した先進観察技術を移転するとともに、鉄鋼以外の材料に対して、当時世界最高水準の25nmに迫る微小部EDX分析技術を構築するなど、ULV-SEM技術を独自提案してきました。
6月10日には、本装置を用いた材料解析の可能性をご理解いただくため、装置メーカーのカール・ツアイス社およびオックスフォード・インストゥルメンツ社と共同で、Webセミナーを開催し、300人と多くのお客様にご聴講いただきました。
導入したULV-SEMの外観を図1に示します。ULV-SEMは、1kV以下程度の極低加速電圧で観察することで、従来のSEMでは見ることのできなかった数nm厚さの極表面も観察できます。図2に示す次世代のEV用固体電池用正極剤(LiCoOx)の表面に形成されたnmオーダーの極めて薄い表面改質層(LiNbOx)も、このULV-SEMを用いることで初めて観察できるようになりました。この表面改質層が確かにNb系物質であることを、EDX(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy:エネルギー分散型X線分光器)分析により、証明できました。
もう一つのULV-SEMの特徴として、従来SEMでの形状観察だけでなく、材料・部品中の物質分布を観察できることがあげられます。物質の化学状態の違いや組成・結晶方位などに起因する像コントラスト観察用検出器を、目的に合わせて複数、有することで、物質分布観察を可能としています。当社の研究・開発より得られた観察条件のノウハウ(複数の検出器条件・加速電圧の適正化など)を駆使することで、高い分解能で広範囲の観察が可能となっています。例えば、磁石の様な機能材料における複相の組織観察(ネオジム磁石では、6種類の物質を同定できました。)や、鉄鋼材料などの構造材料の材料物性制御に欠かせない析出物など金属組織解析などが可能です。
今回、導入した装置には、試料調整した試料を大気にさらすことなく、SEMに導入できる、非暴露ホルダーを搭載することで、電池材料で問題となる水分による変質も抑制でき、開発の進む電池材料の観察対象を拡大しました。STEM検出器も搭載することで、有機材料の観察も可能にしています。さらに、結晶相解析が可能なEBSD(Electron BackScatter Diffraction pattern)も従来に比べて高感度な検出器を搭載しており、広範囲を高い分解能で検出できる、ビームダメージの生じる試料でも、低電流密度で短時間に検出できるなどの利点を有しています。
ULV-SEMも、この20年で検出感度の進歩から従来以上に微細な表面構造も観察可能、さらに微細な部分の分析のための極低加速条件の観察と同条件でのEDX分析など、大きな進歩を遂げています。材料物性の各種試験から、その物性が出現する微細構造までを総合的に解析するため、千葉地区に、この新型ULV-SEMを導入し、従来の材料解析技術に加え、電池、磁石などの材料、カーエレクロニクス・5G向けの電子部品、マルチマテリアル材料の接合・接着などで必要になる材料界面・表面の解析技術を提案し、お客様のモノ作りの問題解決にお役に立ちたいと考えています。
参考図
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