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No.19「定量の極限を目指す化学分析(2)」
JFE-TEC News No.19号 多層断面構造溶接ワイヤの特徴と今後の展開 他 記事一覧
定量の極限を目指す化学分析(2)
No.19 多層断面構造溶接ワイヤの特徴と今後の展開 他
定量の極限を目指す化学分析(2)~微量分析としてのICP(その2)LA-ICP-MS~
レーザーアブレーションICP質量分析
分析試料の表面にレーザー光を照射すると、そのエネルギーは熱エネルギーに変換され、照射部分が溶融状態となり、試料表面から超微粒子を生成し、蒸発します。この超微粒子は、キャリアガスによりICPMS(分析装置)に搬送され、イオン化されることにより、試料の含有元素の定量分析(主成分から微量成分まで)が可能です。この分析システムは LA-ICP-MS(レーザーアブレーションICP質量分析)と呼ばれており、特に微量成分分析では、固体を直接分析できる高感度分析法の一つとして有効な分析方法となっています。
LA-ICP-MSによる分析例
図1は、鉄鋼中の微量Asおよび微量Sbの定量分析のために作成した検量線の一例です。横軸は使用したNIST(米国標準局)製の認証標準物質のAsおよびSbの認証値で、縦軸はLA-ICP-MSで得られたSbおよびAsイオン測定強度を、Feイオン測定強度比で算出したイオン強度比です。得られた検量線の直線性が良好であり、高い信頼性を有する定量分析法といえます。図2は、江戸時代の鉄釘(1.5mm角程度の微少量試料)の微量Sbを定量分析した結果です。LA-ICP-MSによる分析結果と、同一試料の化学分析法による分析結果と、ほぼ一致しています。このように、レーザー照射条件を選択することで、微少量試料(数100ミクロンの測定領域)の測定でも、微量成分を含むバルクの分析が可能となりました。もちろんLA-ICP-MSの特徴である20ミクロン程度の範囲の局所分析や、数10ミクロン程度の厚さの深さ方向分析も可能です。
本分析システムは、電導性、非電導性材料を問わずに固体を直接分析できることから、金属材料以外にもセラミックス、樹脂、電子材料等を対象に、様々な分野で幅広くご利用いただいています。
図1 LA-ICP-MSによるAsおよびSbの検量線
図2 鉄釘分析におけるSbの化学分析値とLA-ICP-MS分析値の相関
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