No.20「定量の極限を目指す化学分析(3)」

No.20
定量の極限を目指す化学分析(3)~微量分析としての原子吸光分析~

微量金属元素定量に広く活用されている手法の一つに原子吸光分析法があります。酸分解などの前処理により溶液化した試料が分析対象です。この溶液を化学炎(フレーム)などに導入し加熱することで生成する原子蒸気に、元素特有の波長の輝線を有す光を透過させると光が吸収(原子吸収と呼びます)されます。光の吸収量は濃度に比例するので、この吸収量を測定し、定量します。原子蒸気を生成する手法として化学炎を用いるフレーム法の他に、①電気加熱法、②還元気化法があります。今回はこの2方法について解説します。

電気加熱法

試料溶液(通常は10~20μl)を黒鉛管に注入し、これに電流を流しジュール熱で1000~3000℃に発熱させ、目的元素の原子蒸気による原子吸収を測定します。フレーム法と違い、元素毎に最適な原子化温度を設定することができる上、燃焼ガスで希釈されず密度の高い原子蒸気が得られます。そのため、フレーム法と比較して10倍から100倍の高感度になります。更に、共存元素や溶解酸などの干渉を除外する手法(プラットホーム法、バックグラウンド補正法、化学修飾剤など)の適用で、信頼性の高い分析が可能となります。

還元気化法

As,Seなど水素化物が常温で気体となる元素では、試料溶液に還元剤を加えて水素化物を発生させ、この気体を加熱した石英管に導入し熱分解することで原子蒸気とし、原子吸収を測定します。試料溶液から目的元素だけを効率良く分離できるため、高感度な分析が可能となります。他にGe,Sn,Sb,Te,Pb,Biなどの元素に適用できます。Hgは還元することで直接水銀蒸気として発生し、原子吸収が測定でき、特に高感度な測定が可能です。
 これらの手法は鉄鋼分析や環境分析のJIS規格に採用されています。適用濃度範囲および感度比較を表、図に示します。また加圧分解法、マイクロウェーブ分解法などと組み合わせることにより、非鉄金属、セラミックス、プラスチックなどの様々な材料中の極微量分析に活用しています。

表 JIS G 1257「鉄及び鋼‐原子吸光分析法」における電気加熱原子吸光法の適用範囲
JIS G 1257「鉄及び鋼‐原子吸光分析法」における電気加熱原子吸光法の適用範囲図 JIS K 0102「工場排水試験方法」における原子吸光分析法の定量下限
図 JIS K 0102「工場排水試験方法」における原子吸光分析法の定量下限

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