No.57「走査電子顕微鏡技術の最前線(1)」

No.57
走査電子顕微鏡技術の最前線(1) ~永久磁石の磁区観察~
Magnetic Domain Observation of the Permanent Magnet

なぜいまこれが?

枯渇する化石燃料の使用量を削減し、地球温暖化などの環境負荷を低減するため、動力源の研究開発主戦場は内燃機関からモータへと移っています。材料面ではモータの高効率化を目指して、強力な永久磁石の開発が精力的におこなわれています。磁石材料の評価で重要な磁区の観察は、これまで様々な方法で試みられてきました。走査電子顕微鏡(SEM)を用いた磁区観察技術は、古くから知られていますが専用装置あるいはSEMの改造が必要であるため、普及していませんでした。当社は、極低加速電圧SEM(ULV–SEM)技術を駆使することで、市販のSEM(Carl Zeiss 社製ULTRA55)を用いた磁区観察に成功しました1)

これがポイント!

図1 Nd-Fe-B系焼結磁石の磁区コントラスト
図1 Nd-Fe-B系焼結磁石の磁区コントラスト

低加速電圧の入射電子を用い、低エネルギーの二次電子を検出するように観察条件を最適化することで、ネオジム磁石(消磁処理材)の磁区コントラストを明瞭に観察できます(図1)。磁気力顕微鏡(MFM)と同一場所を観察することで、図1のコントラストが磁区境界に対応していることを確認しました。試料表面の磁区境界における漏れ磁場の影響を受けやすい低エネルギーの二次電子を検出したことで、明瞭な磁区コントラストが得られたと考えられます。

SEMの特徴を活かして広い視野から局所領域まで自由度の高い磁区観察が可能となりました。また、SEMの多彩な機能を駆使することで、磁区コントラスト像と同じ視野から、形状像、組成像、元素分布像、および電子後方散乱回折(EBSD)法による相マップや方位マップを得ることができます(図2)。ULV–SEM技術は、磁区観察が加わったことで、高度な組織制御など磁石材料の重要研究開発に益々貢献するものと期待しています。ご興味のある方は、お気軽にお問い合わせください。

図1 グラベロ試験機の飛翔体(砕石)の速度計測例
図2 Nd-Fe-B系焼結磁石の同一視野から得られた
磁区像、形状像、組成像、元素マップ(Nd)、およびEBSD方位マップ(主相)1)

1) 小田武秀,佐藤馨,北原保子,桜田委大: 日本顕微鏡学会第73回学術講演会, P_I-12(2017)

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