材料の特性評価
光ファイバー温度計
- 溶接金属の温度、冷却速度の測定技術 -
浸漬型光ファイバー温度計による溶接部の温度測定
溶接継手の特性評価および品質改善を行う上で溶接時の温度履歴を知ることは重要となります。溶接時の加熱温度や、冷却速度の測定には、これまで熱電対を用いてきました。しかし、シース(保護筒)付きでは応答性や精度が低く、シース無しでは、アークにより接点が溶断しやすいという問題がありました。
光ファイバー温度計とは
このような問題を解決したのが浸漬型光ファイバー温度計です。光ファイバーを溶融金属に浸漬して、先端から取り込んだ放射光を、変換器に伝送して測定を行います。溶接部に適用した場合(図1)、光ファイバーの先端が、アークやビームで溶融しても、新しい断面から放射光が取り込まれるため、温度測定を持続させることが可能です。YAGレーザー溶接への適用状況と測定結果の一例(図2)を示します。溶接時の急速加熱および冷却の温度変化がきれいなプロファイルとして測定されています。冷却時に、測定点を溶融池が通過する間は温度降下が停滞する様子も明瞭にとらえられています。
浸漬型光ファイバー温度計(FIMTHERM-H)の概要
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測定装置の外観
通常の放射温度計に、光ファイバーを取り付けた構造の温度測定装置です。ファイバーの先端から取り込んだ放射光により、温度を測定します。
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光ファイバー部の詳細
石英ガラス製光ファイバーは、細い金属管(ステンレス管)で保護されているため、破損しにくい構造です。
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溶融金属の温度測定方法
光ファイバーの先端には、集光レンズがなく、そのまま、溶融金属の中に浸漬させて、内部の温度を測定できます。
光ファイバー温度計の特徴
- 応答が高速です。(標準タイプは10msec ピッチ、高速タイプは0.1msecピッチで測定が可能です)。
- 溶融金属及び溶接金属の温度測定では、放射率≒1で、高精度測定が可能です(理想黒体を形成するため)。
- 光ファイバー先端を交換(または切断)する必要がないため、自動タイプの温度測定装置の製作が容易です。
- 電磁ノイズに強い(光で測定するため、高周波の影響を受けにくい)。
- 日常的に使用する場合、消耗する白金系の熱電対に比較して、低コストであるので、品質管理コストを低減できます。
主な適用事例
- 光ファイバー温度計によるレーザ溶接部およびレーザ・アークハイブリッド溶接部の温度測定 [事例集PDF]
- アルミスポット溶接部の光ファイバー温度計による温度履歴測定 [事例集PDF]
- 光ファイバー温度計による固相接合部の温度測定 [事例集PDF]
- 低温度域用光ファイバー温度計 [事例集PDF]
- 光ファイバー温度計によるFSW(摩擦攪拌)接合部の温度測定 [事例集PDF]
- 薄板のホットスタンプ成型時の光ファイバー温度計による温度測定 [事例集PDF]
- 光ファイバー温度計による切削加工中の刃先温度の測定 [事例集PDF]
- 光ファイバー温度計による高周波焼入れ時の温度測定 [事例集PDF]
- 光ファイバー温度計によるダイキャストの温度測定 [事例集PDF]
ユーザ分野 | 対象 | 適用事例の目的 |
---|---|---|
自動車分野 | 自動車部品のMAG溶接 | 溶接部変形の低減のため。 |
重電分野 | 厚鋼板のレーザー溶接 | シャルピ衝撃値の改善のため。 |
ステンレスの補修溶接 | 残留応力を低減させる溶接条件の検討用 | |
建築分野 | 建築鉄骨のMAG溶接 | 入熱・パス間温度制限の検討のため。 |
鉄道関係 | レールのテルミット溶接 | 機械的特性の向上のため。 |
研究機関 | 各種溶接 | 溶接変形FEM解析のCCT図の温度データの収集のため。 |
関連リンク・関連記事
JFE-TEC Newsバックナンバー
- No.38(2014年01月)ダイキャスト向け光ファイバー温度計
- No.07(2006年04月)光ファイバー温度計による溶接部温度測定の高精度化
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