No.32「収差補正走査透過電子顕微鏡による高分解能組織観察」

No.32
収差補正走査透過電子顕微鏡による高分解能組織観察 ~希土類磁石の主相結晶粒界の観察~
Grain Boundary Observation of Rare Earth Permanent Magnet with Cs-STEM

収差補正走査透過電子顕微鏡の特徴

試料をナノスケールで観察・分析するには、透過電子顕微鏡(TEM)を用いることが一般的です。しかし、カメラなどの光学機器とは異なり、TEMではレンズ収差を取り除くことができず、1nm以下の微細構造を高画質で観察したり精度良く分析することは困難でした。近年、対物レンズの球面収差Csを補正し、0.07nm径の電子線を試料上で走査させながら、観察・分析できる収差補正型走査透過電子顕微鏡(Cs-STEM:Cs-Scanning TEM)が開発されました。電子材料や機能性材料など、界面のナノスケール構造制御が必要な分野では、必須の分析装置になりつつあります。

ネオジム焼結磁石の粒界構造解析

ネオジム磁石は、次世代自動車や省エネ家電のモーターへの用途において、需要が著しく増加しています。この磁石は主相(Nd2Fe14B)、Nd(ネオジム)リッチ相、Bリッチ相から構成される複相多結晶物質で、保磁力は主相の粒径や粒界構造に依存して大きく変化することが知られています。図1は主相の結晶粒界を200kVのCs-STEMで拡大した高角度暗視野(HAADF)像および黄線に沿ったEDX線分析結果と A~C位置の電子線回折像を示します。HAADF像では平均原子番号の二乗に比例したzコントラストが得られるため、従来のTEM像に比べて原子配列の推定が容易になります。結晶粒Aの白点はNd原子、灰色点はFe原子で、図2に示す(110)方向からみた構造モデルと一致しています。主相粒界Bは、幅約5nmにわたりNdが両側のA,C粒より高いことから、Ndリッチ相が存在しています。さらにPr(プラセオジム)、Cuの濃化も認められます。この粒界相のHAADF像には規則的な配列コントラストが見られず、電子線回折パターンにはブロードな回折リングとかすかなスポットしか見られないことから、非晶質と微結晶の混合組織であることがわかります。このように最先端の分析技術を活かし、様々な分野のご要望にお応えいたします。

図1 市販ネオジム磁石の高角度暗視野(HAADF)像(写真)、
図1 市販ネオジム磁石の高角度暗視野(HAADF)像(写真)、
粒界を挟んだEDX線分析結果(上図)
図2 結晶粒Aの黄色枠内(図1)の拡大
図2 結晶粒Aの黄色枠内(図1)の
拡大 写真(上)と[110]方向からみた
主相の結晶構造モデル(下)

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