樹脂・複合材料の組成分析・構造解析
ソルベントクラック試験
小さな試験片を用いて、一度に多数のプラスチック材料のソルベントクラック試験を実施できます。
また、ナイロン66などの樹脂に対して塩害環境のソルベントクラック試験も実施しております。
ソルベントクラック試験とは
応力(ひずみ)が生じているプラスチック材料に特定の薬品類が付着すると、材料が持つ強さ(引張降伏応力等)より小さい応力でクラックやクレーズが生じます。このような現象をソルベントクラックと言います。ソルベントクラックが生じる限界のひずみを臨界ひずみと言い、これは材料と薬品類の組み合わせによって異なります。
臨界ひずみを測定する方法はいくつかあり1/4楕円法がよく用いられますが、1治具あたり1試験片の評価となり、一度に多くの試験ができません。そこで当社では、比較的小さな試験片を用いて一度に多数の試験が可能な定ひずみ試験法を開発しました。
プラスチック材料のソルベントクラック試験例
定ひずみ試験のイメージを図1に示します。短冊状試験片の両端を支点として圧子の位置を調節し、たわみ量を変化させます。
定ひずみ試験の試験片サイズとひずみ量の関係を表1に示します。ここでは試験片厚み2mm、支点間距離が7mmの場合のたわみ量、ひずみ量を表しています。
定ひずみ法によるソルベントクラック試験状況を図2に示します。試験片の圧子近傍にはソルベントを含ませたウエスを接触させた状態で定ひずみを維持します(写真はウエスを取り除いた外観です)。ここでは右端の試験片にクラックが生じています。
表1 定ひずみ試験の試験片サイズとひずみ量 支点間距離 試験片厚み たわみ量 ひずみ量 L(mm) H(mm) W(mm) ε(%) 70 2 2.05 0.50 4.10 1.00 6.10 1.49 20.00 4.90(最大値) 例:試験片厚みが2mmの時ε=6hw/L2で計算 -
図2 定ひずみ法によるソルベントクラック試験状況
CCT試験機を用いたソルベントクラック試験
ナイロン66は汎用性が高く、最も広く使われている樹脂の一つです。しかし塩害環境、特に塩化カルシウム(CaCl2)存在下で劣化が進むことが知られており、海に近い環境や、融雪剤散布地域での使用には注意が必要です。
特に、応力がかかっている状態では、ソルベントクラック(または、環境応力割れ: ESC)と呼ばれる現象が発生し、速い速度で破壊が進行する可能性があります。
試験概要
当社ではNaCl以外の塩(CaCl2やMgCl2など)を含む融雪塩や飛来海塩を模擬した試験液を用い、複合サイクル腐食試験(CCT)機で、試験液付着・乾燥・湿潤といった実環境を模擬したサイクル試験を実施できます。環境印加後の各種評価(引張強度や硬さといった物性試験、SEMによる表面形態観察など)もワンストップで実施し、対象樹脂のソルベントクラック感受性を評価いたします。まずはお気軽にお問い合わせください。
試験、評価の一例
ナイロン66製の結束バンドを塩ビ管に締め付け、応力を付与した状態でCaCl2を含む試験液によるCCT試験に20日間供した結果、結束バンドの表面に微細なクラックが複数発生しました。断面より、EPMAマッピングによる元素分布解析を行った結果、表面およびクラックからCaやClの元素が樹脂内部に拡散している様子が観察されました。
関連ページ・関連リンク
- プラスチック材料のソルベントクラック試験 [事例集PDF]
- CCT試験機を用いたソルベントクラック試験 [事例集PDF]
このページに関する
お問い合わせはこちらから
- JFEテクノリサーチ株式会社 営業本部
- 0120-643-777