物理分析
希土類磁石<ネオジム磁石>
分析事例 EBSDとFE-EPMAによる調査
希土類磁石<ネオジム磁石>
希土類焼結磁石は、エレクトロニクスから自動車用モータなど広範囲に使用されています。磁石としての性能をあげるため、主相(Nd2Fe14B)の結品方位を揃えることや粒子サイズを制御することは重要です。また高温での磁力低下を抑制するために加えられているDy(ジスプロシウム)は、近年、供給不安の観点で問題となっているレアアースのため、できるだけ低濃度で効率よく粒界に分布させる必要があります。
高分解能EBSD法で微細な結晶粒ごとの方位分布を解析し、結晶粒界像(GrainMAP)を、FE-EPMA(電界放出型電子線マイクロアナライザ)のマッピングに重ね合わせることにより、粒界、粒内を見分けながら、元素の分布状態を可視化できます。
市販のネオジム磁石の結晶方位分布
主相(Nd2Fe14B)は、約10μmの結晶粒により構成されており、その多くはC軸(001)が測定面とほぼ垂直に配向していることがわかりました。
ただし、そのずれ角を詳細に見ると、多くの粒子は、0°~40°の範囲でわずかに傾斜しています。
市販のネオジム磁石のFE-EPMAによる定量評価
FE-EPMA測定例
EPMAは、EDXに比べて軽元素(B、C)の検出感度が高く、さらにエネルギー分解能が高いという特徴があります。特に、特性X線のエネルギーが近接しているFe, Nd, Dy, Prについても、ピークが分離し、定性・定量分析の際に威力を発揮いたします。
市販の磁石の主相には、Nd、Fe、B以外にDy(ジスプロシウム)やPr(プラセオジム)およびわずかにMnが含まれていることがわかりました。
測定位置 | 分析点 | Nd | Fe | B | Pr | Dy | Mn | O |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
主相 | A | 9.0 | 81.9 | 4.2 | 2.8 | 0.7 | 0.2 | - |
B | 9.3 | 82.3 | 3.7 | 2.3 | 0.9 | 0.2 | - | |
C | 9.7 | 82.3 | 4.0 | 2.6 | - | 0.2 | - | |
Nd(Pr)リッチ相 | D | 49.7 | 12.4 | - | 29.6 | - | 0.5 | 7.8 |
FE-EPMAとEBSDによる元素分布解析
結晶粒界像(Grain MAP)を、EPMAマッピングに重ね合わせることにより、この市販の磁石には、粒内にDyが多く存在していることがわかります。
このように、EBSDとFE-EPMA、それぞれの長所を生かした複合分析もご提案いたします。
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